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埼玉県総合医局機構 KOBATON.med

“何をしたいのか“が一番大切であることを意識した基本領域診療科の選択が全ての出発点になる

大河原 晋おおかわら すすむ

勤務先
自治医科大学附属さいたま医療センター教授
診療科
腎臓内科・卒後臨床研修室室長
医師年数
医師33年目
出身大学
自治医科大学
資格
総合内科専門医、日本腎臓学会専門医・指導医
日本透析医学会専門医・指導医、日本病態栄養学会学術評議員
経歴
1991年(平成3年3月) 自治医科大学医学部卒業
2016年(平成28年4月) 自治医科大学附属さいたま医療センター腎臓内科准教授
2017年(平成29年8月) 同教授
2021年(令和3年4月) 自治医科大学附属さいたま医療センター卒後臨床研修室室長
埼玉県キャリアコーディネーターの大河原先生に、インタビューを行いました。 専門研修先を選ぶ上でのポイントや、貴重なアドバイスが満載ですので、ぜひ御覧ください。

1.専門研修先を選ぶポイントについて

基本領域(診療科)はどのように選ぶのがよいでしょうか?

興味があって、自発的に学ぶ意欲のもてる分野であることがまず重要だと思います。自分が楽しめない領域の学習は継続が難しいですし、仕事がつらくなる一因になります。ただ、学生時代の興味と、医師になってからの興味は変わりえるものなので、診療科を選ぶ前に、様々な経験を得る機会には積極的に参加することをおすすめします。臨床研修先、学会や勉強会などで出会った人の縁も、専門研修先を選ぶ重要な因子になると思います。

専門研修基幹施設を選ぶポイント(基準)はありますか?

自分の興味のある内容が学べるかどうかが最重要です。興味のある内容が決めきれない方もいると思いますが、その場合は専門研修中に多種多様な経験ができ、かつ終了後に選択肢が多い環境が良いと思います。症例が豊富であること、指導体制が整っていることはもちろんですが、切磋琢磨できる仲間がいるのも重要な要素だと思います。専門研修を先に行っている先輩方の表情や職場の雰囲気を感じるために、見学をして確認することも大切と思います。

サブスペシャリティは取得した方がよいでしょうか? また、どのように選ぶのがよいでしょうか?

サブスペシャリティは取得するのが良いと思います。資格をとれる環境下にあるときは、日々の診療の延長線上に資格があり、熱心に専門研修を行っていれば取得は困難ではありません。ある程度、医師の経験を重ねると、資格を有するほうが選べる仕事の幅は広がると思います。サブスペシャリティの選択は基本領域を選ぶ時と同じですが、自発的に学ぶ意欲をもてる領域を選択するのが良いと思います。サブスペシャリティを先に決めて、専門研修先を決める方もいると思いますし、専門研修先で仕事をしていた結果、サブスペシャリティを得る方もいるでしょう。最終的にサブスペシャリティを得なかったとしても、誠実に仕事をされる人はどこでも求められますので、こだわりすぎなくてもよいかもしれません。

ダブルボードを検討しているのですが、基本領域の選び方を教えてください。

ダブルボートは自分のやりたいことを突き詰めていった結果として必要になるものだと思います。一例として①救急科専門医として仕事をしていたら、自身で消化管内視鏡を実施する必要を感じて、内科専門医→消化器内科専門医→消化器内視鏡専門医の資格を得た例、②脳神経外科専門医として仕事をしながら、救急外来での仕事をして救急科専門医を得た例、などがあげられます。ただ、最初からダブルボードを目的とした基本領域の診療科の選択および専門医の取得は研修内容が散漫になる可能性も考えられます。したがって、“何をしたいのか“が一番大切であることを意識した基本領域診療科の選択が全ての出発点になると思います。

海外留学や大学院を選択するメリットはありますか?

それぞれにメリットもデメリットもあります。“自分がやりたいことを達成するために必要かどうか”を勘案して判断することになります。どちらも自分の視野を広げ、新たな可能性を模索する一つのオプションです。
海外留学ですと、国内で気が付けない問題点や視点に気が付ける、整った研究環境を得る、多種多様な人と知り合い新たな生活環境を得るなどのメリットがある一方で、費用負担や慣れない環境での困難を克服すること、学ぶための時間を確保する必要があります。
大学院進学の目的は“学ぶこと”にあります。医師として研鑽を積む中では、解決できない問題に直面したり、自分が学んでいない新たな領域に興味を持つこともあります。この解決手法や、新たな領域を開拓するための学習機会/時間を得る場所が大学院です。大学院にいった結果、新たなことに気が付くことで生き方が変わる可能性があります。また研究職や教育職の立場を得るには必要なプロセスになります。費用や自分の時間を使うことになることがデメリットと言えばデメリットになるのでしょうか?自分の目標に必要かどうかで判断することで良いと思いますが、個人的には、学位取得は医師として物事を論理的に考える力を養うために、最も大切なプロセスの一つと思います。

2.埼玉県で専門研修を受講するメリット

埼玉県で専門研修を受講するメリットを教えてください。

今後の埼玉県を俯瞰すると、県全体の人口減少が進む中、75歳以上の高齢者人口は全国で最も速いスピードで増加する見込みのため、医療機関を受診する患者はしばらくの間、年々増加すると試算されています。一方、いまだに人口10万人あたりの医師の数は、全国で最下位レベルとなっています。このように厳しい医療体制ですが、研修をする立場から考えるとこれは非常に大きなチャンスともとらえられます。研修では多くの症例を経験し、手技や問題解決技法を磨く機会に恵まれることが何よりも重要ですが、それが得やすい素地があると言い換えることもできます。埼玉県には医師偏在を是正するためのシーリング制度(研修限度人数上限)の対象となる基本領域は、2024年時点ではありません。また学閥を感じることは非常に少ないです。県内の医師の出身大学や研修先は多彩であり、そのゆえの居心地のよさはあると思います。多様な背景の医師が集まる環境にいると、様々な出会いにもつながります。日々刺激的な生活を送るには大変良い環境なのではないかと思います。
大河原先生から、全国の医学生・臨床研修医にメッセージ

2024年から医師の働き方改革が行われており、医師が働く環境も大きく変わっています。社会の高齢化もあり、医療に求められる役割が増えつづけていますが、一方で働き手は足りません。AI(人工知能)やIoT(物のインターネット接続)、5Gによる通信容量の増加などの技術を駆使して、現在、採用されている様々な医療現場の技術は、10年後には大きく様変わりしていることが予想されます。どのような時代がやってくるか予想は困難ですが、日々適応していくことが求められています。
 変化に対応するために学び続けることは大変ですが、その力がますます重要になってくると思います。同様にその力を維持するために、健康を維持するのはさらに大切です。体調管理に気を付け、きちんと休息をとり、しかし時代の変化についていけるよう、継続的に学び続けることが大切です。さらに、医師として研修中のみならず、どのような年代・状況でも努力を続けることが最も重要であることを忘れないで下さい。