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自分が活き活きできる場に居るということは、患者のためにもなっている

林 健はやし たけし

勤務先
埼玉医科大学国際医療センター 教授
診療科
総合診療内科/神経内科
医師年数
医師30年目
出身大学
東北大学
資格
総合内科専門医、脳神経内科専門医、脳卒中専門医、医学博士
経歴
1969(昭和44年)8月 埼玉県熊谷市生まれ
1994(平成6年)3月 東北大学医学部 卒業
東北大学医学部付属病院、いわき市立磐城共立病院、国立宮城病院で臨床研修
岡山大学付属病院、総合太田病院などを経て
2015年(平成27年)7月~ 現職
埼玉県キャリアコーディネーターの林先生に、インタビューを行いました。専門研修先を選ぶ上でのポイントや、貴重なアドバイスが満載ですので、ぜひ御覧ください。

1. 専門研修先を選ぶポイントについて

基本領域(診療科)はどのように選ぶのがよいでしょうか?

医師需給バランス、収入、生活スタイルとの兼ね合い、家族の勧めなど、いろいろなことを考えると思いますが、基本的に、自分の興味ある領域に進むのが良いと思います。毎日の仕事が楽しくないのでは、他の条件を満たしていても人生つらいですよね。
収入、生活スタイルや勤務先などは、可変因子です。自分でどうにかすることができます。また、今後医療環境がどう変化しても、良心的な医師の需要がなくなることはまずありません。また、お勧めするものではありませんが、自分に合っていないことが分かったら、変更することも可能です。
これが楽しいな、この領域に興味があるな、と感じる道に素直に進むのが一番だと思います。自分が活き活きできる場に居るということは、患者のためにもなっているものです。

専門研修基幹施設を選ぶポイント(基準)はありますか?

連携施設、協力施設に出向することもあると思いますが、やはり研修の中心は基幹施設です。十分な症例と指導陣がそろっている基幹施設のプログラムを選びましょう。
私は、まず何より大切なのは十分な質と量の症例だと思います。その地域の「最後の砦」となっている病院には、数のみならずバライエティ豊かな症例が集まってきます。多少医師が足りない地域の病院でも、十分な症例があればすばらしい研修ができます。足腰強い骨太の医者になれます。
それと、必ず見学に行ってください。恋人と同じで、研修施設には相性があります。Aさんに最適の病院はBさんには適していないかも知れません。見学に行く時間は、どの病院でもOKしてくれると思いますよ。

サブスペシャリティは取得した方がよいでしょうか? また、どのように選ぶのがよいでしょうか?

内科や外科は多くの医師がサブスペシャリティ(いわゆる2階建て部分)の専門医を取得していますし、それが良いと思っています。ただ、不可欠かというとそうでもない気がします。サブスペシャリティ専門医を取得していないけど引っ張りだこの医師は何人も見てきましたし、サブスペシャリティ専門医を持っているけど残念ながら戦力にならず職場の移動を繰り返している医師も見てきました。一緒に働くとなると、中身で評価されますからね。
取得できるものであれば取得しておく、しかしあまりこだわらない、というスタンスが良いかなと思います。
あまり多くのサブスペシャリティを持つのは考えものです。チームで、施設で、地域で、あなたにはあなたの役割がありますから。

ダブルボードを検討しているのですが、基本領域の選び方を教えてください。

ダブルボードは、あくまでオプションだと思います。フォワードもできるゴールキーパーがいても良いのですが、チームに必要なのは何よりしっかりしたゴールキーパーですから。
ダブルボードは、目指すものではなく、結果としてついてくるものだと思います。私のまわりには、脳神経内科医として脳卒中リハビリに積極的に取り組んでいたら、リハビリ医学にも強い興味を持つようになり、リハビリ専門医も取得した先生がいます。そのような姿が自然なダブルボード取得だと思います。
最初からダブルボード取得することを目標にしてしまうと、シュート練習に精を出すゴールキーパーになってしまいます。そのようなゴールキーパーなら、チームとしては、要らないですよね。

海外留学や大学院を選択するメリットはありますか?

海外留学については、様々な目的があると思いますので、一般化は難しいですね。ただ、焦点を絞った目標を持つことが重要だと思います。△△の研究のために留学する、■■の技能を取得するために修行に出る、など。●●国の医療全般を見学してくる、というのでは、インターネットで検索するのと大差ないように思います。
大学院は、やはり、研究者(基礎、臨床を問わず)としての道を考えている人にお勧めしたいです。研究だけに時間を充てる期間を持つことになりますので、その間の臨床経験は少なくなります。ただ、研究職につくためには研究に没頭する時間も大切です。将来的に研究教育職に就きたい人は考えてみてください。
ちなみに私は大学院経験者ですが、そのため専門医取得は少し遅くしました。研究没頭期間があったことは、大学に職を持った今は役に立っていると思います。その一方で、専門医取得が遅れたことは、今の自分のキャリアに何の影響も与えていません。

2. 埼玉県で専門研修を受講するメリット

埼玉県で専門研修を受講するメリットを教えてください。

私は、県内ほぼ全てを人事的に掌握しているような強い国立大のある県で働いてきたことが2回(2県)あります。それと比べると、埼玉県はかなり様相が異なります。
まず、自由です。絶対王政時代のフランスと現代アメリカのような違いがあります。風通しが良いです。自分の選びたい施設の選びたいプログラムを選べます。大学院に行きたければ、全国どこの大学院でも選べます。君主がいないと不安ですか? 大丈夫です。総合医局機構という、(特定の大学の色彩が強いわけではない)中立的かつ強力なネットワークもあります。埼玉県で医師として働いていくことに安心してください。
また、症例が豊富です。人口当たりの医師が少ないということは、逆から見れば、医師当たりの経験が最も豊富ということでもあります。のびのびと、力いっぱい頑張れます。
そして、将来にわたって高い医師需要が見込まれることも大きなメリットだと思います。医師が相対的に少ないこと、今後の高齢化がさらに医師を必要とする状況を作り出すことなど、この県には皆さんの活躍する場が極めてたっぷりと用意されています。
林先生から、全国の医学生・臨床研修医にメッセージ

キャリアは長いです。急がず、しかし弛まずに歩んでください。
大学受験前に猛烈に勉強して、大学低学年はダラダラ過ごして、研修医になったらまた猛烈に頑張って、というやり方は、賢明ではありません。マラソンで、最初の5キロを全力疾走して、その後10キロまで歩いて、それから15キロまで再び全力疾走して、という走り方をしていて、良いタイムが出ますか? 残念ながら、多くの医学生/医師はそのような走り方をしています。
コンスタントに努力を続けてください。全力疾走が必要になることは、人生でめったにないはずです。日々のおだやかな勤勉さだけが、10年、20年した時の実力になっています。短期間の猛烈な努力は20年、30年後の実力になりません。
それと、これを読んでいる研修医にひと言。休みを取ることも研修期間中に修得して欲しい技能の一つです。休むというのは、難しいんです。これができないために、何人の医師がキャリア中断していることか。明日につなげる休息を取るということも、いろいろと工夫してみてください。あなたなりの休み方がわかってくるはずです。幸多き人生を願っています。